稲沢市議会議員のしちおうです。
4月20日にお隣の愛西市で市長選挙と市議会議員補欠選挙が行われました。
この補欠選挙において、昨年11月の稲沢市長選挙に立候補された永田千佳氏が立候補。結果、当選されたのですが、落選した候補者の方などから「市内に居住実態がない」として市選管に対して当選無効を求める申し出がなされました。
他市のことなので静観していましたが、稲沢市長選挙に立候補された方が疑いをかけられたということで市内外の方から問い合わせを受けました。現在の状況を分かる範囲でお伝えしつつ、そもそも今回の話の肝である「公職選挙法の被選挙権における三ヶ月の居住要件」が分かりにくいと思うので解説します。
被選挙権の要件の一つ「三ヶ月区域内に住所を有する」
市町村議会議員の選挙に立候補するためには、「25歳以上」かつ「その地区に三ヶ月以上住んでいる」ことが必要というルールがあります。
公職選挙法第9条第2項:日本国民たる年齢満18年以上の者で引き続き三ヶ月以上市町村の区域内に住所を有する者は、その属する地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する。
これ、ぱっと見だと「じゃあ、選挙の三ヶ月前までに住民票を移さないとね」となると思うのですが、住民票だけではダメなんです。
公職選挙法が指す「住所」とは、地方自治法や民法と同じく「各人の生活の本拠」を指し、私的生活の中心地を意味します。つまり、居住実態の有無なんですよね。「住民票移しただけじゃなくて、本当に住んでいるよね?」ということが問われているということです。
公職選挙法の分かりにくさ
「住居」という言葉の意味もそうですが、公職選挙法って本当に分かりにくいです。さらに複雑にしているのが「すべての選挙で居住実態が問われるわけではない」ということで。
該当地区の居住要件があるのは、実は市区町村議会議員と都道府県議会議員のみで、市区町村長や都道府県知事、衆参議員は必要ありません(代わりに、都道府県知事と参議院議員は年齢要件が異なり、30歳以上です)
当選無効の判断と居住実態の証明
報道によると、永田議員は昨年12月中旬に愛西市に引っ越し、単身で生活。今年4月の選挙に立候補とのことなので、選挙の三ヶ月前からの居住実態が認められれば問題はありません。
しかし、もしも居住実態が認められないとなった場合は当選は無効。異議申し立ての日付が選挙後三ヶ月以内なので次点の方が繰り上げ当選となります。
(余談ですが、市区町村選挙の場合は繰り上げ当選はなく再選挙になるなど、選挙によってルールが異なるので公職選挙法って本当に難しい…)
では、居住実態をどのように証明するのでしょうか?
一般的には、水道電気ガス料金の比較。たとえば、単身者の場合は一般的な単身者と比べたり、引っ越し前と後とで差があるのかどうかを見ることで居住実態を調べます。
他にも、食料品や日用品、飲食店のレシート。引っ越しの方法。マイナンバーカードや郵便物などの変更届。選挙物品の納品先。家財の状況。日記などスケジュール帳の書き込み。近隣住民等の目撃情報などで証拠を集め、判断されるようです。
最近の事例
2021年執行の戸田市議会議員選挙
西本誠氏(立候補者名「スーパークレイジー君」)が居住実態がないと当選無効になりました。判断の理由は、住民票を移した先の賃貸アパートやライフラインの請求が他人名義。郵便物の多くが本人に届かなかった。周辺住民への聞き取りで五人中五人が見ていないなどでした。
戸田市議会議員一般選挙における当選の効力に関する異議の申出に対する決定について – 戸田市公式サイト
2023年執行の柏市議会議員選挙
小川学氏が居住実態がないと当選無効になりました。市選管は当選の判断でしたが、県選管に審査申し入れがなされ、市選管の決定を覆す判断が下されました。こちらも同様にライフラインの使用状況や生活実態を窺い知れる領収書の提出、周りへの聞き込みなどが行われたようです。
令和5年8月6日執行柏市議会議員一般選挙 当選の効力に関する審査の申立てに対する裁決書
※ ものすごく細かく調査結果が書かれているので読み応えがあります。
愛知県愛西市議会議員補欠選挙で当選した永田千佳議員の場合、これから市選管によって上記のような調査が行われ、最初に申し出のあった4月24日の一ヶ月後までを目処に判断が下されるものと思われます。
ただ、決定後は互いに不服の申し立てが出来、その後の判断は県選管。そして、裁判所へと移っていくため、最終的な判断は長期にわたる可能性があります。
いずれにせよ、一刻も早く実態が解明されて、当選された方が市政をより良くするために活動して下さることを願っています。


