【解説】愛西市議会議員補欠選挙で「当選無効」の決定がなされました

選挙の話

稲沢市議会議員のしちおうです。
以前に当ブログでまとめた「愛西市議会議員補欠選挙の当選人に対する、当選無効の申し出」について、「当選無効」の決定が下されました。

補欠選挙で当選取り消しの経緯

2025年4月20日に実施された愛知県愛西市議会議員補欠選挙において、当選した永田千佳氏に対して、市内の有権者3名による異議申出がなされました。

内容は、「永田氏には、選挙時点で愛西市内の居住実態がなかったのではないか」という指摘です。

これを受けて、愛西市選挙管理委員会は調査を開始。決定が下されるはずだった日程を延長し、慎重に審理を重ねた結果、永田氏が被選挙権を欠いていたとして、6月26日に当選を取り消す決定が下されました。

この決定は、市町村議会議員選挙でたびたび問題となる「住所要件」に改めて焦点が当たる事例となりました。

問われた「居住実態」:法律のポイント

公職選挙法では、市町村議会議員の被選挙権を持つには、その市町村に「引き続き3か月以上住所を有していること」が必要とされています。

ポイントとなるのが、ここでいう「住所」とは、単なる住民票の登録ではなく、実際に生活の拠点として使われているかどうか(生活の本拠)という実態が重視されるということです。

つまり、外形的な住民票の記載だけでなく、電気・水道・ガスといったライフラインの利用状況、地域との関係性、生活の中心がどこにあるか、といった客観的事実に基づいて判断がなされます。

公選法の「居住実態」の証明には、「住民票を移す」だけでは足りないということですね。

異議申出人らの主張

異議を申し立てた市民3名は、永田氏が愛西市内に転入してから実際には居住していなかったと主張しました。その根拠として挙げられたのは、以下のような点です。

・夜間に自宅の電気はついていたが車がない日が続いていた
・近隣住民は「引っ越しの時に一度見たきりで、実際に住んでいるとは思えない」と証言
・洗濯物の内容からも本人の生活が疑わしいとの声
・稲沢市に夫と3人の子どもが住んでおり、家族と別居して愛西市に住む理由が不自然
・水道や電気、ガスなどの使用量が極端に少ない(例:2か月間で水道使用量が0㎥)

これらは、居住実態がなかったとする有力な状況証拠とされました。

永田氏の反論と説明

一方で、永田氏は愛西市内での政治活動を日中行い、自宅には夜間戻っていたと主張。政治活動の証拠として、市内のスーパーなどでの領収書やSNSへの活動投稿、生活に必要な家財(洗濯機やカーテンなど)の購入履歴も提出しました。

また、選挙期間中に実父が危篤となり、看病と葬儀のために稲沢市の実家を頻繁に訪れていたことも説明。「一時的な事情による例外的な外出であり、住所要件の妨げにはならない」と述べていました。

しかし選管は、これらの主張を「主観的な説明に過ぎない」とし、実際の居住実態を裏付ける客観的な事実が不十分であると判断しました。

委員会の判断と結論のまとめ

愛西市選挙管理委員会は、永田氏の転入日(2024年12月17日)から数えて選挙日前日(2025年4月19日)までの間、特に1月20日~3月31日までの期間において、愛西市内の住所が「生活の本拠」であったとは認められないと結論づけました。

特に重視されたのは次の点です。

・ライフラインの使用量が一般的な単身世帯と比べて極端に低い
・稲沢市の実家での生活が中心になっていた可能性が高い
・政治活動の証拠が、実際の生活実態を裏付けるには不十分

そのため、永田氏は公職選挙法に定める被選挙権を欠いており、「当選無効」とされました。

愛西市議会議員補欠選挙 当選の効力に関する異議の申出に対する決定について

これにて決着、にはならない理由

永田氏は、今回の愛西市選挙管理員会の決定に不服がある場合、愛知県選挙管理委員会に審査を申し立てることができます。

報道によると、永田氏は不服の申し立てをされるそうなので、本件は舞台を県に移し、再度調査が行われる見通しです。

また、県の決定に対しては裁判で訴えを起こすこともできるため、決着は相当先になると思われます。さらには、報道によると異議申出人3人の内2人は次点の候補者に対しても同様に居住実態がないとの訴えをされているそうなので、本当の当選人が決まるのは見通しが立たない状況にあります。

来年4月には愛西市議会議員選挙の改選があるため、決着が付かないまま選挙に突入し、市民が改めて選ぶことで民意を示す形になるかもしれません。

ただ、仮に当選無効が最終決定された場合、支払われた報酬の返還の訴えがあるかもしれず、しばらく市政の混乱は続くと思われます。

全国的なニュースとなり、不本意な形で全国区となってしまった愛西市ですが…これを機に市政への関心が高まり、来年の市議選に挑戦する人が増えるといいですね。