脳科学の研究結果をもとに進める「16か年教育」〜兵庫県小野市の取り組み〜

しちおうの政策

稲沢市議会議員のしちおうです。
先週、全国の先進地市町村を学ぶ「行政視察」に出かけさせて頂きました。学んだことをブログにまとめます。

※ 行政視察の内容は、報告書にまとめることが議会内で義務付けられていますが、残念なことに一般公開はされていません。しかし、交通費や宿泊代を税金から頂いた研修であるため、しちおうは当選以来ずっと視察の報告をブログで行なっています。

一泊二日の視察の初日は、兵庫県小野市の「夢と希望の教育」です。
小野市では、脳科学に基づく独自の16か年教育を通じて、子どもの学力や心、体、生活習慣を総合的に育む教育理念を持っています。

① 事業開始の背景

事業開始は約20年前。時代背景としては、全国的に児童生徒の基礎学力の低下が問題視され、学校現場で凄惨な事件が起きたことによって、心の教育の必要性が高まっていた時です。

当時の教育長が「脳を鍛える学習療法を提唱されていた川島隆太教授の理念」に共感し、教育行政顧問として招聘。脳の司令塔である「前頭前野を鍛える」ことで生きる力を育み、心の教育に繋げていくという取り組みが始まりました。

① 脳科学に基づく教育

考える力や我慢する力、物を覚える力、コミュニケーションする力などに関係する前頭前野は、難しい問題を解く時よりも、読み聞かせや読書、音読をしている時に活発化すること。

そして、前頭前野の成長は3歳まで、と10歳から、特に変化することから、脳の特性や成長に合わせて科学的根拠に基づいた段階的なアプローチを行なっています。

  • 1期(1〜5歳):親子の関わり重視、読み聞かせ、良質な睡眠・食習慣促進
  • 2期(5〜10歳):「おの検定」で読み・書き・計算・英語力の定着、生活習慣形成
  • 3期(10〜15歳):小中一貫教育、理数・英語教育強化、ICTとアナログのバランス
② 重点施策

⒈ おの検定

特徴的なのが、独自テキストの「おの検定」
基礎学力を定着させ、豊かな心を育む学習システムとして考案されたもので、科目は漢字・計算・英語があり、いずれも市内公立教職員の総力で作られました。

  • 家庭学習の習慣化を目指すため、一人あるいは家族と取り組みやすい内容を心がけている
  • 間違いを収集、分析し、再チャレンジ&フィードバックを実施
  • おの検定には体力部門もあり、継続した運動習慣の確立と脳科学に基づく食育を行なっている

これらの取り組みにより、小野市では児童・生徒の基礎学力向上や非認知能力(心の成長、自己肯定感など)の指標が全国平均より良好でした。市内外の行政や教育関係者による視察も多数実施され、「学ぶ力・心・生活習慣の複合的な育成が成果」と高く評価されています。

⒉ 小中一貫教育

9か年の学びの繋がりを大切にした教育を行い、脳の発達の時期(10歳の飛躍)と学習内容の高度化に対応しています。

  • 小学校高学年から教科担任制にすることで学力向上と自立に向けた社会性の育成を図っている
  • 小学6年生を中学校へ編入し、5年・4年制を導入し、中1ギャップの解消や合同行事を推進している

⒊ 16か年教育

市長部局と連携し、脳科学の知見に基づく子育ての啓発を行なっています。パパママサロン教室や7か月児教室などを通じて年間1,500人以上が受講。脳科学を生かした子育て・教育に関するショート動画もYouTubeで公開しています。

⒋ 教育環境の整備

上記取り組みの推進のため、余計な儀式の廃止など、さまざまな改革を行なっています。

  • 学校教育予算の増額(ソフト面のみの予算で事業開始時よりも3倍以上増額している)
  • 教育委員会の学校定例訪問の廃止(教委の権威主義の破壊)
  • 市の研修指定の廃止(学校の自主性にとって邪魔)
  • 教員の定例教育講演会の廃止(必要な時に必要は方を各校の判断で呼ぶ)
  • 学校長裁量権の拡大(各校に50万円の研究費を配布し、主体的な学校運営を促している)
所感

視察では、乳幼児期における声かけや抱っこ、褒めること。学童期における読み聞かせや読書、音読の重要性が脳科学に基づいて語られ、これまでも「良い」と思っていたことが「なぜ、本当に、子どもにとって良いか」がよく理解できました。

日々の育児や教育に悩む保護者や教員にとって、「その行動は科学的な根拠に基づいている」と太鼓判を押されることは安心や自信に繋がるのではないかと感じました。

→ 私自身、視察後、いつも以上に子どもへの声かけや読み聞かせが増えました(笑)

生まれる前から義務教育を卒業するまでの16年という、長い、しかし大切な期間を、一貫性を持って見てもらえるというのは、町の大きな魅力であると思います。

そして、実際に学力の向上という結果が出ているということ。さらに、学力としては計りにくいが、生きる上で重要な非認知能力を育むことにも成功していることは、大きな成果と言えるでしょう。

ただ、それは一朝一夕に実現できたことではなく、学力低下や心の教育の必要性が言われ始めた20年も前から先進的に取り組んできたからこそできたことです。そして、そうなるよう独自のテキストをわざわざ作るという現場の弛まぬ努力と、市長部局の教育予算の倍増という決断や教育委員会の無駄な仕事の廃止など、周囲の支えがあってこそのものであると感じました。

その背景の一つは、7期連続当選している市長が進める「現状打破と新たな創造」を掲げた行政改革にあり、ゼロベースの発想でチャレンジすることを推奨する組織風土も大きな後押しになっていると感じました。

小野市の取り組みは、将来の子どもたちのために何が必要で、何ができるのかを考え、行動してきた結果が20年という時を経て実を結んだのだと思います。

稲沢市の20年先を見据えた教育のビジョンというと、現状はパッと思い浮かぶものがありません。今からでも、稲沢で生まれ育った子どもにどんな力を付けてほしいか、そのために大人は何ができるのかを、科学的根拠を持って考え直していく必要があると感じました。

視察二日目につづきます。

道中は、一車両のみの電車で。帰り、小学生と乗り合わせて、世間話をしました。この子も小野市の16か年教育を受けているのか、と思いつつ。